築年数を多く経過したマンションが増えるにつれ、長期修繕計画を作成している管理組合は増加傾向にあります。国交省による平成20年度の調査では、実に89%ものマンションで長期修繕計画を作成しているというデータが示されています。
下記のグラフは、計画期間25年以上の長期修繕計画に基づき、修繕積立金の額を設定しているマンションの割合を示したものです。平成20年度の時点で、その数は36.6%にのぼり、平成15年度の19.7%から大きく増加していることが分かります。
しかし多くの場合、築年数が経過するほどマンションへの新規入居者は少なくなり、住民の転居や高齢化も進むため、ほとんどの管理組合で積立金不足に陥ります。年金暮らしの住民も多くなるため、積立金を増額するのも簡単ではありません。マンションの劣化とともに細かな修繕も増え、積立金不足はさらに深刻となるでしょう。また、修繕には「終わり」という定めがないため、徐々に建替えへと意識が向いていくこととなります。
一般的には築年数が30年経過した頃から、マンション建替えの意識が高まる傾向にあります。しかし、耐震工事が進まない、建替え決議がまとまらないといった理由から、建替えしたくともできないことが多いのです。
さらに、建替え成功事例のほとんどが等価交換方式によるものです。これは、居住者が所有している土地を出資して、その土地に不動産会社が新たにマンションを建築(出資)するというもの。マンションの完成後に居住者と不動産会社それぞれの出資比率に応じて土地建物を取得する方式のため、お互いにメリットがあって初めて成り立つ方式です
築30年以上経つと、必然的に高齢の住民が多くなるため、何百万円にもなる出資の負担に拒否感を表す住民も少なくありません。また、不動産会社側も住戸を売りにくい土地の場合は難色を示すことがあり、管理組合で建替え決議が通ったとしても、不動産会社が見つからずに建替えが行われないということもありえます。
このようなことから、マンション建替えは想像以上に困難というのが現実です。
下記のグラフ(国土交通省のアンケート結果)を見ても、マンションの築年数が経過しているにも関わらず、なかなか建替えを決断し切れていない状況がわかります。
建替えができない場合でも、マンションの劣化をそのまま放置してはいられません。そこでとられる措置が対処療法的な延命です。しかし、延命ではマンション劣化の抜本的な解決にはなりません。また、延命を繰り返すうちに、住民の高齢化は進む一方となり、ますます建替えるのが困難となってきます。この悪循環を回避するためにも、早い段階で高齢化を見据えた対策を打っておく必要があります。