今、お年寄りを標的にしたリフォーム詐欺が大きな社会問題になっている。これらは一般住宅の問題だが、ネットサーフィンをしてみると欠陥マンションやマンション建設に伴う近隣地域とのトラブルが実に多いことがわかる。そこには消費者、居住者、地域住民を無視した作る側や売る側の一方的な論理が透けてみえる。
企業理念や行動規範は一体どこにいったのか。
翻って、既存のマンションにおける管理やリニューアルの現場を見つめてみよう。
大きな社会問題にこそなっていないが、ここにも消費者軽視の問題の構造が透けてみえる。一方、消費者側もいたずらに問題に悩み、翻弄されているのが実態である。
安心して住み続けられるマンションであるための確かな管理を可能にする賢い消費者を早急に育てていくことが必要である。賢い消費者には少なくとも「5つの脱」が求められる。
「羅針盤なき航海」:
管理のよりどころとなる管理規約や諸規則などが関連法制度の動向も勘案しながら適切に見直されているかどうか。
「脱おまかせ主義」:
大事な管理の問題を管理会社や理事会などにお任せになってはいないか。
管理の主役は一人一人の区分所有者であるはずなのに、他人事のように考える観客的区分所有者が多くはないか。
「脱共私混同」:
共有と私有の区分の無理解がいたずらに混乱を招いていないか。
共有意識を培うことが暮らしを変えるモメントにもなるという認識が持たれているかどうか。
「脱看板頼み」:
大手だから、有名だから、今まで問題がなかったからとイージーに管理会社や施工会社を選んではいないか。
そのために管理費や修繕積立金の無駄遣いがされてはいないかどうか。
「脱無計画な運営」:
目前の問題やトラブルに目を奪われ、時には翻弄され、中・長期的な観点から管理を捉える視点をおきざりにしてはいないか。
これら「5つの脱」を可能にするためには、何よりも管理の主役である管理組合がしっかりしていることである。また管理組合のニーズに対し、適切に支援するシステムが社会に用意されていることである。
本法人では管理組合や居住者向けのセミナーや交流会を通じて支援するとともに、リニューアル工事や管理組合運営に関わる各種相談に応じる他講師やアドバイザー派遣にも取り組んでいる。
その一方、リニューアルに関わるちゃんとした知識と技術を身につけた職人や技術者を育成する匠塾や改修アドバイザー育成講座などを開講したり、工事の品質を確保するための適切な仕様書作成や技術指導などにも真摯に取り組んでいる。微力ではあるものの、こうした本法人の取り組みに対し、賢い消費者(居住者)を標榜する人たちの間に共感と支持の輪が徐々に広がっていくことを期待している。