団地の規模が大きくなるほど、建物の問題や建替えの必要性が共有しづらくなり、全棟から大多数の同意を得て建替えを行うことが難しくなります。
また、一括建替えを行っても、大量に出た保留床を一度に販売することが難しいケースも考えられます。
こうした場合は一括建替えを行うよりも、建替えができた棟から段階的に建替えを行う方法が現実的です。
団地内の一部の棟より建替えの発意があった場合、理事会などを通して各棟の建替え意向を確認して団地の建替え単位を検討します。もし、複数棟の共同建替えを行うことができる場合、1棟だけで建て替えるよりも建築計画の自由度が拡大し、計画的な空間を設計することが可能になります。
建替えを行う棟が団地全体の容積を先食いしたり、建替えを行わない棟が敷地の持ち分上不公平になったりすると、建替えの承認は得られにくくなります。一部の棟が先行して建替えを行う場合は、その棟の建替え計画だけでなく全体の建替えを想定して建て替え構想を作るようにしましょう。
具体的には「建替え棟が余剰容積率の先食いをしていないか」、「各棟の容積率利用の基準確認」、「団地内通路や広場、駐車場の位置の確認」、「特定の区分所有者の専有部分に影響をおよぼす事項の確認」などを検討・確認する必要があります。
棟ごとに建替え決議を行う場合は、当該棟の建替え決議と団地の承認決議が必要です。
建替え棟の建替え決議は、1棟で行う通常のマンション建替え決議と手順は同様になります。建替え決議の開催2カ月前までに開催通知を発し、集会の招集者は開催日の1カ月前までに集会の採集通知に記載される通知事項について、説明会を開催することが必要です。
建替え棟に関する団地の承認決議の場合は、集会の2カ月以上前に団地内のどの棟の建替えについて承認決議を求めるのかと新たにどのような建物を建設するかを示した招集通知を発送しなくてはなりません。
このことは区分所有法35条「招集の通知」と第69条「団地内の建物の建替え承認決議」において定められています。
なお、団地の承認決議については、招集通知に記載した通知事項についての説明会を開催する必要はありません。
しかし、団地の承認決議について多数の同意を得て円滑に成立するためには、説明会の開催は不可欠といえるでしょう。
団地内の一部の建物を建て替えた時に、規模や個数が増加することが考えられます。団地の共有部分や敷地は、専有部分の床面積の割合で定められている場合がほとんどですので、建替え後に調整を行う必要が生じます。
この時、建替え棟が土地の権利をほかの棟から買い取ることとなるため、団地建物所有者の全員合意を条件として持分の売買や登記の変更を行います。ただし、全員合意の手続きは難しいことが多いため、当該棟内部にて相互間で売買して登記するという方法を採ることがあります。