建替え計画の内容がほぼ固まり区分所有者の理解も得られたら、次はいよいよ建替え決議を行い建替え事業を実施する段階へと進みます。
区分所有法が改正される前は、建替え決議を行うのに区分所有者及び議決権の各5分の4以上の賛成を得るだけではなく、「建物が老朽、損傷、一部の滅失等の状態にある」、「建物の効用を維持または回復(修繕・改修)するのに、建物価額に比べて過分の費用を要すること」などの要件がありました。さらにこれらの要件について具体的な基準がなかったため、区分所有法に基づく建替えはなかなか行われていませんでした。
平成14年に区分所有法が改正されたことで、これらの建物にまつわる要件がなくなり、「区分所有者及び議決権の各5分の4以上の賛成のみで建替えを決議することができる」ことになりました。
建替え決議の最大の意義として「建替え参加者のみで建替えを円滑に実施することができる」ということがあります。建替え決議が成立すると建替えに参加しない区分所有者は自分が所有している区分所有権と敷地利用権を時価で売渡し、そのマンションからの転出を求められます。
建替え決議を行うタイミングは、区分所有者の同意がすべて得られた状態で行うのが最適です。しかし、非賛成者の同意を得るのが難しい場合は、非賛成者がいることを前提として建替え決議を行わざるを得ない場合があります。
区分所有者のどのくらいの人が賛成の立場をとっているのか、反対に回る可能性があるか、は建替え決議を行う前にある程度把握をしておく必要があります。いつ建替え決議を行うかについては、専門家と相談のうえ、検討を重ねて決定するようにしましょう。
建替え決議の実施を目的とする集会を行う際には、その集会が開催される日の2カ月前までに招集通知を送ることが義務付けられています。招集通知には、会議の目的となる事項と議案の要領に加え、建替えを必要とする理由、建物の効用の維持または回復をするのに要する費用の額及びその内訳、建物の修繕に関する計画内容(定められている場合)、修繕積立金として積み立てられている金額などを提示することが必要です。また、建替え決議の招集者は、開催日の1カ月前までに、以上の通知事項についての説明会を開催しなくてはなりません。
区分所有法に基づく建替え決議を行う際には、建替え計画の概要として「新たに建築する建物の設計の概要」、「建物の取り壊し及び再建建物の建築に要する費用の概算額」、「前号に規定する費用の分担に関する事項」、「再建建物の区分所有者の帰属に関する事項」の4点について定める必要があります。
また、計画段階に検討した成果の整理と、事業実施段階についても事前に確認するのが望ましいので、事業方式や事業実施段階における参加組合員や参加する専門家や建設会社の選定方法について、建替え不参加者への対応について簡潔に整理して提出するようにしましょう。