建替えの検討は、最初から建替えを前提として進めるのではなく、さまざまな条件を比較したうえで大規模修繕・改修と建替えのどちらが必要かを総合的に判断することが大切です。
まずは現マンションの劣化の進み方や現在マンション住民(区分所有者)が抱いている不満や希望を把握したうえで、「要求改善水準」の設定を行いましょう。その「要求改善水準」に基づき、建替えと修繕それぞれのメリットとデメリット、費用と改善効果についての検討を進めます。
現マンションの劣化の進み方、老朽度の判定から、現状と将来の予測を行います。
この判定は専門家に建物診断を依頼して行いましょう。
次にマンション住民が現在のマンションにどんな不満を持っているか、改善してほしい点はどういうことかということをアンケートなどで意見の吸い上げを行います。アンケートは全マンション住民に対して行い、全員の回答が得られることが理想です。そのためには、検討組織のメンバーが各戸を訪問したり、不在のマンション住民に対して電話をかけたりといった活動が必要になります。
専門家に任せっぱなしにせず、コミュニケーションを行いながら意見を求めたり、インタビューなどで直接対話をしたりすると、多くの意見が集まります。
老朽度が判定され、住民の意見を吸い上げたら、建替えまたは大規模修繕・改修を行うと仮定した場合に、必ず実現したい水準である「要求改善水準」を設定します。建替えの場合は大規模修繕や改修では困難な事項も含まれることになりますので、大規模修繕・改修の要求改善水準よりも建替えの場合の方が一般的には水準が高くなります。
マンションの「老朽度判定結果」と「要求改善水準」をもとに、大規模修繕・改修の工法を専門家の協力をもとに検討して工事の内容を設定します。同時に見積りを行い、工事にまつわる概算の所要費用を算出します。
建替えとよく比較される大規模修繕や改修の手法には、修繕工事による性能や機能の回復、長命化だけでなく、専有部分の2戸1戸化や増築による住戸面積の拡大などがあり、こうした手法についてもメリットやデメリット、実現の可能性、改善効果について比較することが必要です。
マンションの老朽度判定結果と要求改善水準をもとに、大規模修繕・改修と同様に建替えについても建替えの工法を検討し、専門家のサポートを得たうえで工事内容と概算の工事費用を決定します。
建替え構想を検討するには、マンション住民のアンケートが役立ちます。希望する住戸の広さや間取り、建替え費用の負担可能額、設備などに関する要望などの意見をもとに建替えイメージを構想し、最終的には実現性や事業性を客観的に判断しながら最終的な建替え構想を取りまとめます。
建替えの場合は旧マンションよりも専有面積を増やしたり保留床の販売などで建替え費用を軽減できたりする場合があります。そのため、単なる新築の費用で算定せずに、こうした事業性を考慮して算定するようにしましょう。